ヤフオク偽造登録証付き海軍刀顛末記

ヤフオク海軍刀顛末記

以前このブログにも記載しましたヤフオクでAさんが購入された海軍刀の顛末を記します。

大変素晴らしい顛末となりましたので、是非とも皆様にもお薦め致したく記す次第です。

 

事はAさんがヤフオクで海軍刀を落札したことに始まります。

不錆鋼の一刀で、俗に言うステンレス刀です。

落札金額は13万円程だったとうかがっています。刀としては安い部類ですが、それでも我々庶民にとって、十数万と言えば結構な金額かと存じます。

Aさんは落札したその刀の名義変更をしようとしたところ、添付されていた登録証が偽造されたものであったことが判明しました。当然ながら出品者に連絡するも返品は受け付けてもらえなかったようで、教育委員会と相談を重ね、新規登録のために現物確認審査に出向かれました。

しかしながら中心に軍事工廠の刻印が打たれていることから、登録不可と言う判断が教育委員会から下されました。

この場合、刀身を切断すれば、拵と中心(なかご)部分の所持は許されます。或いは完全に廃棄処分の手続きをとるかの二択となります。

しかし私がAさんを評価するのは、そのどちらの選択もされず、第三の選択をされたことです。

それは…

 

寄贈

 

です。

 

この海軍刀を今の姿のまま残したいと切望されるAさんの御相談に、私はメールで対応させていただきました。その中で直近で頂いたメールをご紹介致します。

 

 

以下Aさんからのメール
こんばんは、返信を頂きまして有難うございます。
ブログに取り上げて頂けるとの事で、嬉しさと共に大変恐縮しております。
今回ようやく寄贈先が無事見つかりましたが、それまでに自衛隊広報、護国神社、遊就館や大和ミュージアム、博物館や美術館なども随分あたらせて頂きました。
寄贈受け付けを表明されていても、やはり登録が付かない軍刀は何処も敬遠されますね。
そもそも登録が付くなら私は決して手放したりは致しません。
大阪府の教育委員会担当者の配慮のお陰もあり、最終的にこちらが寄贈を強く推せる結果となりました。
購入費用などは働けばまた手に入るものですが、戦後を生き延びた貴重な軍刀は唯一無二の存在ですから代わりはありません。
それを考えれば、この先も宇佐市の資料館にて永くその姿を留めて頂く事となりましたらこれ幸いです。
資料館との事なので、宇佐市に足を運ぶ機会があれば、また目に触れる機会もあるかと思います。
刀剣に対してズブの素人ではありますが、せめて心だけでも自分に恥じないように心掛けたいと思います。
切断して拵だけでも手元に置いておこうと損得勘定で考えてしまいがちになるものですが、Aさんは一振の軍刀の貴重な存在価値を最優先に考慮され、ご自身の金銭的損害は二の次に、件の海軍刀を資料館に寄贈されました。
私は同じ刀剣趣味人としてAさんの心ある対処に感銘を受けると共に、同じく登録不可の烙印を押されて廃棄されてしまう軍刀類を、一振でも多く健全な姿のまま次の時代に遺せる方法があるということを、今回の記事で皆様に知って頂ければと思い、今回この記事を書かせていただきました。
無鍛錬の軍刀に美術的価値は無いか?
全く美術的価値が無いわけではありません。
GHQによる占領下にあって、数多の日本刀を護るべく、佐藤寒山、本間薫山両先生が苦渋の決断の下、戦前戦中に作られたマシンメイド製日本刀を人身御供として差し出す代りに、古い時代の刀剣や、技量高い近代・現代刀匠の作品を護られたのです。
先の敗戦からもう70年以上経過しています。
軍刀は日本刀史における一時代を担う存在であり、これを無視しては日本刀史にぽっかりと穴が空いてしまいます。
そろそろGHQの呪縛から解き放ち、軍刀も他の美術刀剣同様に、堂々と登録所持できるように法改正して頂きたいと強く願うばかりです。

伯耆守藤原汎隆 越前住 ~珍しい繋中心(つなぎなかご)が附属した目を惹く一刀~

伯耆守藤原汎隆 越前住
– Echizen ju Hoki no kami Fujiwara Hirotaka –
 
 
汎隆は越前下坂一派を代表する刀工で、越前兼法の流れを汲む道本兼植(かねたね)の門人。伯耆守藤原汎隆、越前住伯耆守汎隆、伯耆大掾汎隆などと銘を切ります。
作品は切れ味に定評が有り業物として名高く、下坂派の中でもかなりの人気工であったこと伝えられ、現在でも「ぼんりゅう」「ぼんたか」と親しみを込められた愛称で呼ばれています。
 
この刀は寸法上でこそ脇指ですが、短寸の刀として鍛えられたもので、反り浅く、元先の差が開いた寛文新刀然たる姿が好ましく、緻密に練られた地鉄に、明るく冴えた互ノ目乱れを焼き、所々に汎隆らしい荒沸を交えた覇気溢れる出来口。
 
附属の打刀拵は贅を尽くした千段刻鞘が目を惹く逸品で、金着切羽の状態も良く、唐人図の見事な透鐔が添えられ、笄も完備しており、外装だけでも独り歩きできる名品です。
更に面白いのは、柄木の折損を防ぐべく、短い中心を長く延すための素銅地繋中心(つなぎなかご)が附属している点で、古人の智慧を如実に感じ取ることができる珍品です。
刀身並びに外装も、共に特別保存同時審査を是非御受審下さい。
 
裸身重量588グラム。  拵に納めて鞘を払った重量904グラム。
 
 
各種クレジットカード、セディナショッピングローンによる分割購入も承っております。お気軽にお申し付け下さい。