無銘 伝 青江 ~南北朝中期の豪壮な姿~

無銘(伝 青江)
– Mumei(Den Aoe) –
 
青江は備中国高梁川の左岸に位置する子位庄(こいしょう)子位の旧称で、この一帯は南方に万寿本庄、南西部には万寿庄、北方には子位庄が広がり、いずれの地も鎌倉時代初期から南北朝中期に至るまで鍛冶が栄え、この派の鎌倉中期迄を古青江、南北朝期に至るものを青江と区分して呼ばれています。
一般的に青江と言えば身幅広い豪壮なイメージが強いかと思われますが、青江に限らず、身幅が広くなるのは南北朝中期の延文貞治頃の作品であり、南北朝初期や後期の作品は身幅が狭く上品で大人しい姿となります。
青江の特徴としては、地鉄が縮緬風にちりちりと杢目立つものや小板目肌が美しく詰むものが多く、平地には澄肌、鯰肌と称せられる地斑が表われ、刃文は直刃を主体に稀に逆がかる乱刃もあり、概して初期のものは沸づき、末期の物は匂本位となり、締まった直刃を本領としています。
 
この刀は、大きく磨り上げられるも身幅広目で身幅の割に重ねが薄く、切先延びた典型的な南北朝中期の姿を留めており、淡く映り立った地鉄に匂口の締まった直刃を焼き、刃中には逆がかった足が見られます。
現状古研ぎで地刃の観賞は可能ですが、良い刀だけにしっかりと研磨を施した上で、南北朝中期の青江物の地刃の冴えを存分にお楽しみ頂ければと思います。
 
裸身重量660グラム。  拵に納めて鞘を払った重量977グラム。

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