再現出来たら100万円!THE神業チャレンジ

昨夜放送されました『再現出来たら100万円!THE神業チャレンジ』を御覧下さった皆様、貴重なお時間を番組視聴に充てて下さりありがとうございます。

昨年9月19日に放送されました同番組では、私の剛速球居合斬りが誰にでもできてしまう芸当だと、大きく誤解を与える構成であったことは、以前このブログにも記しましたし、ユーチューブでも語った通りです。

その後番組制作側からも謝罪を頂き、今回はちゃんとした居合で神業に挑みたいとのことで、修心館本部道場主席指導員である柳原健一君を指導役として派遣致しました。

前回の放送同様、間違った居合、抜付の構成になってはいけないものですから、私は監視役として柳原君による指導に同行したのですが、一生懸命学ぼうとされるティモンディ高岸宏行さんの姿を見るに、本来なら指導しないつもりだった私もついつい黙ってはいられなくなりまして、ところどころで直接指導させて頂きました。

今回の放送構成は前回の放送に比べると確かに改善されていましたが、それでも一部誤解を与えてしまう部分がございましたので、このブログ記事にその点を挙げさせていただきます。

 

一生懸命果敢にBB弾居合斬りに挑まれました高岸さん。なんとかBB弾に刀身を当てることが出来まして、放送では「刀の刃先に当った」とテロップにて表現されていましたが、刃先には当っておらず、大きく撓った刀身が元に戻ろうと反発した際に、刀身の平地に偶然にも当った(刀身がBB弾を上から下に叩いた)と言うのが正しい表現となります。

私のBB弾居合斬りと今回の神業チャレンジでのBB弾斬りでは、質及び条件が全く異なりますことを第一に挙げさせていただきます。その違いとは…

放送の中でもコメント致しましたように、飛来するBB弾の高さに刀を合わせる技術が必要不可欠なのですが、短時間の稽古では流石にそこまでのことは習得できませんので、射撃手は鞘から抜けた刀身にBB弾が当りやすいよう、刀の鯉口辺りの高さを狙って撃っています。つまり、私のBB弾居合斬りのように、胸下辺りに飛来してくるBB弾の軌道を掴むのではなく、抜刀のタイミングさえ合えば刀身がBB弾に当る可能性が高い条件になっているわけです。
また、放送ではその説明はありませんでしたが、発射されるタイミングがわかるよう、射手の斜め後方にランプが三つ設置されており、それがカウントの役目を果たしていました。

私がこれまで出演した番組でも、カウントされる場面がありましたが、それは撮影時の安全確保のためであり、私はカウントを聴いて抜刀しているわけではありません。むしろカウントは自分の間(ま)の感覚が阻害されるので私にとっては邪魔なものでしかありません。

上記のようにカウントや高さ等、あくまでバラエティ番組ですから、少しでも成功確立が上がるように条件を整えてのチャレンジだったことを御理解頂けますと幸いです。

 

尚、放送後にツイッターで、刀が大きく撓る様子に、高岸さんが使用していた刀が真剣ではなく、模擬刀であったからチャレンジに失敗したのではないかという憶測が出たようですが、こちらについても御説明させて頂きます。

今回のチャレンジで高岸さんが用いた刀は、今回の撮影のために特別に刃先を鋭く尖らせた(刃をつけた)模擬刀です。
何故真剣を使用しなかったのかと申しますと、たかが6ミリのBB弾とは言え、真剣の刃先に弾が当りますと、極僅かではありますが刃こぼれをきたしてしまうため、無用な試斬によって真剣を損なわぬようにとの配慮が一つ、そしてもう一つの理由としては、高岸さんの身の安全のためであります。
眼で追うのも苦労する6ミリのBB弾を斬ることに集中してしまうと、フォームが崩れてしまい、正しい抜付ができなくなります。
それは番組を御覧下さった皆様にも、刀が大きく撓りながら鞘から抜ける様子を見て御理解頂けるものと思います。

確かに真剣の方が模擬刀よりは硬質なので、撓み辛さは多少なりあるかとは思いますが、仮に真剣を用いたとしても、ほぼ同じように大きく撓んでいたはずです。真剣でも技術が伴わない者によって抜付されると、大きく撓んでしまうことは、前回放送時に不的確な指導を行った某氏の動画を御覧頂ければ一目瞭然です。
刀身に一切の負荷をかけず、また、撓らせることなく、鞘から抜き放つと同時に切先の高さを飛来するBB弾の高さに合わせながら、BB弾に刀を当てるのではなく、完全に真横一文字に“斬る“という高い斬撃力を加味することがBB弾居合斬りに必要な高等技術なのです。
尚、当日高岸さんが使用していた模擬刀で、私はBB弾を斬ってみせていますので、模擬刀だから斬ることができなかったとか、模擬刀だから撓ってしまったと言うのは、居合を知らない者による戯言にしか過ぎません。

ですから当日、収録の影で刀を撓ませない抜付について、私は高岸さんにご指導さしあげ、高岸さんも落ちついた状態の時には割りと理想に近い抜刀ができていましたが、回を重ねるにつれ、「斬らなければ」という焦りから、どんどんフォームが崩れてしまい、結果あのように大きく刀を撓らせてしまう抜付になってしまったわけです。

模擬刀ですらあれだけ撓らせてしまうのに、これを真剣で行っていた場合は、鞘の中央から刃が飛び出してしまったり、鞘の糊付けを割ってしまったり、鯉口を割ってしまうなどと、高岸さんの身は大きな危険にさらされ、場合によっては指を切断してしまう事故も起こりかねません。※下図参照

鞘割れの原因

 

番組を録画されていた方は、是非繰り返し刀が撓ってしまう抜刀の時の高岸さんのフォームを見てください。焦るばかりに身体で刀を抜くのではなく、腰を捻りながらの鞘引きになっているのがお判り頂けるはずです。

現在、いえ、現代居合と称した方が的確かと思うのですが、現代居合は鞘引きを手で行うものと、間違った解釈の下普及しています。巷で見かける居合稽古に使われていた模擬刀や真剣を見ると、横手付近にヒケがたくさんついていたり、鯉口内部をささくれさせたり、大きく削ってしまっているのが、上述の腰の捻り+手での鞘引きによる結果なのです。

ですから「鞘引き」を連呼したり、腰を捻って抜刀する先生方からは正しい抜付は学べないと私は断言します。

少し話が逸れてしまいましたが、テレビ番組制作会社様には、今回の神業チャレンジを最後に、長年修練を積んできた者の真似事を芸能人に行わせることは慎んで下さいます様強くお願い致します。
今回の撮影では、私が上述の危険を予測し、模擬刀を用意してチャレンジして頂いたからこそ事故は起きませんでしたが、これを刀や居合の知識に乏しい人が真剣で指導していたら… そう考えると本当に恐ろしいのです。

番組上で事故が起きますと、今後刀を取り扱う番組の制作にも規制がかかってしまったり、銃刀法が更に厳しくなる可能性は否めません。
どうか安易な気持ちで刀を使ったチャレンジを行わないで下さい。これは番組制作側だけでなく、このブログを御覧の皆様にもお願いすることです。
私の真似をするのはしっかりと修行を重ねてからにしてください。「自分にも出来るかな?」みたいな安易な気持ちで絶対に行わないで下さい。“あなたの身勝手が居合修練者や刀剣愛好家に多大な迷惑と損益を与えることになります”しっかりと心して下さい。

宜しく御願いいたします。

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