刀 無銘 ~出来良い備前小反り派~

無銘

無銘
– Mumei –
https://nihontou.jp/choice03/toukenkobugu/katana/1528/00.html

大磨上ながらも元先の幅差開いて切先やや延びる。反りが深かったものと見え、茎で反りを抑えられている。地鉄は杢目がよく練れて詰み、淡く映り立ち、刃文は小湾れに互ノ目や丁字風の刃を交え、足、葉入り、湯走や飛焼を交え、鋩子は表裏共に直ぐ調に先丸く返るも、裏は相当長い沸筋を食い下げ丸く返っています。
なかなか見応えある出来口で、備前の小反り派の作品かと鑑せられ、指表の横手下辺りの棟角には誉疵が在り、実戦を潜り抜けた浪漫溢れる優刀です、実に惜しいかな刀身の中央に刃切があります。

刃切ある刀は折れ易く価値が無いと誤認されるようになったのは、江戸中期も後半になってからのことで、刀剣学者である鎌田魚妙(かまたなたえ)が唱えだしたことと言われています。
現代における引っ張り強度実験に於いても、よほど大きな刃切で無い限り、刃切有る箇所から折損することはなく、鎌田魚妙の無知な見解が今尚刀剣界では引き継がれ、「刃切=無価値」とのレッテルを拭うことができず、数多の名刀が刃切があることを理由に切断廃棄されたり、埋鉄の材料等にされています。
そう言う意味では鎌田魚妙程罪な人は居ないと言って過言ではありません。今の時代、正しく刃切を認識し、刃切有る刀の地位名誉回復を今後の刀剣界に期待したいものです。

つきましては刃切の言葉に惑わされず、この御刀の真の価値を見て愛でて下さる方にお譲りしたく思います。安価で御紹介するも、試斬にお使いになられる目的の方への販売は硬くお断りさせていただきます。

※刃切有る刀が実用に際しても問題が無い証拠として、前田利家の愛刀“丈木”が挙げられます。 丈木と号がつけられたこの太刀は、享保名物帳にもその名を連ねる名刀で、以下のように記載されています。
『丈木 太刀なるべし 松平加賀守殿 高倉宮の御内、長谷部信連の子孫より出る、北国にて箸にする木を丈木と云ふ、背中に立に負ひ行くなり其内の者を切るに、丈木ともに切り留る故の名なり、長氏気短き仁にて家来を呵りながら釜の鏆なり、爐(いろり)の縁にてきざまれ奇妙に切れるものなり、刄切七つあり利常卿御秘蔵の御差料なり』
前田利家が大坂の秀頼公に有事ある時には、この丈木を以て家康を討つと話した逸話が残っていることからも、古の武将達は刃切を気にしなかった様子が窺えます。

裸身重量698グラム。

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