備州長船祐定作 天正二年八月日
– Bishu Osafune Sukesada saku –
末備前物と称される室町末期の刀工中、祐定銘の作刀は多く、中でも与三左衛門尉、源兵衛尉、彦兵衛尉が有名です。刀剣の需要が多く求められた戦国期、備前刀は数多の戦に向けて数多く鍛えられ、そうした実用刀で俗名を銘切っていない末備前物を、数打と卑下する悪習が刀剣界にはありますが、粗製乱造されたわけではなく、俗名を銘切っていない作品の中にも、驚く程出来が良い作品が多々見受けられ、中には俗名個銘極めまで可能な出来優れた作も見られます。
この脇指は、杢目肌が良く練れて肌立って地景入り、中直刃基調に小足を交えて小乱れを呈し、刃縁上品に沸づいて金筋入り、砂流顕著に現れるなど、単調な直刃のイメージを覆す出来良い逸品です。
附属の拵は切羽の一枚に至るまで、すり替えられることなく保存された製作当時のオリジナル。小柄が失われていることだけが惜しまれます。
兵庫県の大きな御屋敷からこのたび売却された名品で、旧所有者は昭和を代表する大物実業家で、愛刀家としても知られた崎山好春氏。重要美術品指定の刀剣をはじめ、数多の名刀を秘蔵されていました。既にそれらの多くは売却されましたが、今回同家に残る刀剣類5振を引き取らせていただき、極上研磨を施して皆様にご案内差し上げる次第です。
※崎山 好春(さきやま よしはる 1897年(明治30年)9月19日~1974年(昭和49年)6月10日)
日本の実業家。大同海運社長、大日海運会長を務めた。東京都知事石原慎太郎、俳優石原裕次郎兄弟の実父石原潔の前妻勝子は崎山の妻の姪にあたる。
裸身重量505グラム。 拵に納めて鞘を払った重量796グラム。