本当に実戦を潜り抜けてきた刀

本当に実戦を潜り抜けてきた刀
無銘
– Mumei –
 
杢目肌刃縁柾がかって肌立ち、淡く映り立った地鉄に尖り互ノ目を焼き上げた作品。
己の武勲を誇示すべく、刀傷を棟や棟角に付けた刀が殆どで、実戦によってついた本物の誉れ傷は極稀ですが、この刀についている誉れ傷は間違いなく実戦によって付いたものです。余程の腕達者の愛刀だったようで、鎬を用いて上手に敵の刀を受け流しています。刀身の中央に二箇所。中央よりやや上のところにも二箇所受け流しによる受け傷があります。私(店主 町井勲)の経験では、受け流した際には相手の刀が流れる際に2~3の傷が付くもので、単に一つだけしか傷がついていないものは、後から故意に付けられた刀傷だと断言して良いでしょう。この刀には受け流しの他に、敵の刀を摺り上げた後も棟に3か所程有り、間違いなく実戦で使われた痕跡が窺えます。
上述の通り、誉れ傷ある刀の殆どが、作為的に付けられているのに対し、この刀のように本当に戦場を潜り抜けてきた刀の存在は大変貴重です。
実戦に於いて、どのような形状で敵の刀による傷が付くのか、非常に興味深い戦国浪漫を感じさせる好資料となる一刀です。
樋は後の時代に掻かれたものですが、深く掻いて極限まで軽量化されていますので、手に取った際のバランス良さに驚かれることでしょう。柄は革巻きで握り良いです。
 
裸身重量515グラム。  拵に納めて鞘を払った重量773グラム。

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