北越住昭久 昭和四十七年三月日 ~陸軍受命刀工ならではの抜群の姿とバランス~

北越住昭久 昭和四十七年三月日 ~陸軍受命刀工ならではの抜群の姿とバランス~
北越住昭久 昭和四十七年三月日
– Hokuetsu ju Akihisa –
 
本名、山上重次。明治43年生まれ。栗原昭秀の日本刀鍛錬伝習所にて笠間繁継に作刀を学び、昭和9年、刀匠銘「昭久」を昭秀師より拝命して、昭和18年には陸軍受命刀工となり、陸軍軍刀展覧会においては特別名誉席に選ばれた、昭和の激動の大戦期に生きた名刀匠です。
戦前は、新作日本刀展文部大臣賞・海軍大臣賞・陸軍大臣賞などを受賞。戦後は、昭和29年に作刀承認を受け、いちはやく作刀を再開し、新作名刀展では、努力賞・入選等多数受賞。後進の育成にも努めました。
 
「日本刀を二度蘇らせた男 栗原彦三郎昭秀全記録」によると、山上昭久の刀は昭和17年(1942)における現代刀匠の暫定位列表においても「貴品上位」最上大業物、検査役格でした。
 
この刀は元先の差が程好く開き、反り浅目ながらも棒反りのようにはならず、美しい反り姿をしており、地鉄は小板目肌よく練れて柾がかり、刃文は匂口明るく冴え、小湾れ調子に互ノ目を焼き、足盛んに入り、互ノ目丁子交え、細かな砂流かかり、刃中良く沸え、帽子は表裏共に直ぐに極僅かに湾れごころを交え、先丸く横手迄焼き下げています。
 
先にも記述しましたが、反りが浅い割に優雅な反り姿が素晴らしく、鞘を払って手にした際のバランスも抜群です。裁断に際しては、反りが強すぎても良くなく、本刀のようなやや浅目くらいが抜群の斬撃力を発揮するのですが、こうした重要点をしっかりと抑えているところは、やはり実用を重視して作刀していた受命刀工時代の経験こそがなせる技と言えましょう。研磨も真面目な下地が施されているので、現状のままでもその切れ味はかなり期待でき、扱い易いバランス故に居合に於ける片手操作にも非常に適した一刀です。
 
裸身重量767グラム。  拵に納めて鞘を払った重量1,038グラム。

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