天心流兵法が発信する誤まった情報を真向から斬る! ~刀は地面に立てるものではない!! 3 ~

車のバンパーは、衝突の際に車本体や搭乗者を守るためにあります。

しかし、だからと言って無駄にバンパーを擦る人、当てる人は居ない。刀の鐺や石突金具も同じです。

現代人がバンパーを擦っただけで滅入るのと同じく、士達は鞘や鐺に傷がついたら滅入っていたはずです。

 

私が今から20年程前に、共に居合を修業していた友人とこのような会話をしたことがあります。

 

私「甲冑って高いやん? 新調した甲冑着て戦出てさぁ、相手に切り込まれたりして兜や鎧に傷がついたらどう思う?」

友人「そりゃぁ許されへんなぁ。弁償しろって思うし、弁償してもらえない戦の場やったら、絶対こいつ殺したる!って思うなぁ。」

 

人間なんてそんなものです。

 

秀吉が戦国時代までは単なる武器でしかなかった刀剣に、美術的な価値を認めさせた頃から、刀はただの刃物ではなくなりました。

士分の象徴であり、武士の魂にまで昇華したのです。

 

あなたが頑張って貯めたお金、もしくはローンを組んで最高級のベンツを買ったとしましょう。

バンパーは障害物に当っても車本体を守るためにある物だから…

バンパーは傷ついて当然のものだから…

そう言いながら笑ってバンパーを擦れますか?

 

刀も全く同じです。

今の時代の安価なカシュー塗とは違うのです。

本漆で鞘塗りを依頼したことがある人なら解るでしょう。

安いところに頼んでも、鞘塗りだけで10万円程が消えて行きます。

 

それだけのお金をかけた鞘に、自ら傷をつけるようなことをするでしょうか?

湯水のように使えるお金を持っている人は論外ですが、一般人の感覚ではできないものです。

 

重ねて言います。

刀も車のバンパーと同じです。

uS63 AMG longv

神速の居合術DVD発刊に至る経緯

私がツイッター等、ネット上でその存在と系譜に関してかねてより警鐘を鳴らしてきた天心流兵法。

ここ最近では特に陰湿なる天心流兵法擁護者とのネット上での議論(議論とも言えないくだらない嫌がらせだが)にいささか疲れていました。

ネット上では大多数が善であり、少数派は悪と言う構図も自然と出来上がるものだと、今回天心流兵法に触れてみてつくづく実感した次第です。

一部のツイッターユーザーに、「なにより、修心流の批判に賛同する人がほとんどいない。当然の結果だと思う。」と記述されたことは、私個人的にとても悔しい思いでいっぱいでした。

昔から長い物に黙って巻かれることができない性分であり、真摯に古武術としての居合を今も研究している私には、天心流が紹介する記事の内容、動画、どれをとっても首肯できるものは無く、むしろ嘘もつきとおせば真実になるとの言葉があるように、事実、天心流兵法はすでに失伝したであろう三日月藩にあった天心流そのものと、数に勝る天心流擁護派によって既成事実となりかけていました。

更に拍車をかけるようにNHKワールドスポーツが、調査裏取りをつけずに番組内において天心流兵法をとりあげてしまったことは、正統なる日本武術史の観点から見て、NHK最大のミスだと私は考えており、当該番組の責任者及びリサーチ会社は、当該番組中に於いてしっかりと謝罪すべきものだと考えます。

さて、前置きが長くなりましたが、BABジャパン様より発売されました神速の居合術DVD発刊に至る経緯をここに記します。

 

かねてより天心流兵法の動画に見られる基礎が出来ていない単なる早抜き(敢えて速抜きとは記述しません。早と速は意味が異なるからです)と、物理的にありえない形の紹介動画に対し、私はダメ出しをし続けてきました。

私のことを快く思わない方の中には、「町井は天心流兵法に嫉妬している」などと受け取られた方も数多おられたことでしょう。

天心流兵法はネット戦略が巧みで、コスプレを好む方や、漫画を描かれる方、俄かに侍に憧れる方に評判が良く、それらの方々は天心流兵法が発信する情報を鵜呑みにされ、間違った刀法をそのまま自身の漫画やイラストに取り入れてしまうなど、悪意無き武術史、武術の捏造拡散に加担されてしまいました。

私と渓流詩人さんがどれだけ警鐘を鳴らそうとも聴く耳を持っては下さいませんでした。むしろ攻撃的な意見を発する擁護派ばかりだったと言って過言ではないでしょう。

常々口にしてきたように、天心流兵法が江戸前期創流の古武術であるとか、柳生宗矩云々とか、江戸柳生分流だの、宝蔵院流影派だの、三つ葉葵紋並びに柳生笠紋の使用など、度を過ぎぬ広報活動をしていなかったなら、数多散見する系譜捏造流派の一つとして見向きもしなかったと思います。ただ、彼らが踏み越えてはいけない境界線を越え、武術を知らぬ素人や外国人に過大広報活動をしてしまったことは許されざるものと考えます。

「古武術 天心流兵法の写真、動画における創作でのトレス、模写の使用フリーに関して – Togetterまとめ 以前から多くの反響を頂いております天心流の写真、動画について、新たにツイートしたものをまとめました」

の一文に対し、「なんて親切なの」と喜びトレスしてしまった方も、はっきり申し上げて日本古武術史陵辱に加担した一人であることと、事の重大性を自覚されたし。

何気なくトレス使用したその構え、技、作法など、それらが漫画や同人誌という形で広く拡散されてしまうことで、それらの構え、技、作法は古来より伝承されてきたものであるという誤解がどんどん広まってしまうのです。そう、韓国が発信するありもしなかった従軍慰安婦の話が、今や既成事実のようになってしまったのと同じように… 従軍慰安婦問題もたった一人の朝日新聞記者が引き起こした騒動です。嘘は塗り重ねていくと真実と化してしまう恐ろしさに気付いて下さい。「単にトレスしただけ」では済まされないのです。どうか事の重大性に気付いて下さい。

 

さて、実は私の居合術(修心流居合術兵法)に関するDVDの製作に関しましては、もう何年も前から数社が企画提案されてきましたものを、私は悉く断って参りました。

その理由としては、今現在はこう考えているが、数年先にはまた違う考えになっているかもしれないし、今現在の自分の居合を否定しているかもしれない。と考えていたからです。この考えは他の武術家の先生方にも見られ、植芝盛平翁の書の師でもあり、合氣道十段(非公式)であった阿部醒石先生も同じお考えのもと、生涯に渡り合氣道に関する書籍は一冊も出されませんでした。(※私の記憶が確かなら)

 

そんな私が今回、何故BABジャパンさんからの企画を受け入れたのか? それは天心流兵法がネットを駆使して発する早抜き動画や情報に対する警鐘に他なりません。

あれらの動画を見て早いと賞賛される方々はずぶの素人と断言して良いでしょう。彼らの動画をしっかりと見定めたことがありますか?

刃筋立たぬ抜付と各種の振り。武術に長けた方ならそれだけで武術としてはダメだと結論を出されることでしょう。ところが素人は正否を見極める眼を持っていない。見極める方法の一つとしてお教えしましょう。彼らの動画をコマ送りしながらよくご覧になってください。鞘から抜ける瞬間、模擬刀がしなり、たわんでいることに気付くはずです。それだけではなく、各種の振りの中においても、模擬刀が変形して見える瞬間を見ることができます。これ即ち基礎が出来ていない証拠なのです。

 

しかし素人が圧倒的に多いネット閲覧者はそれに気付けません。天心流兵法の大袈裟で派手な動き、ありえない動きに憧れて門戸を叩き入門された方も多いはず。天心流が殺陣のサークルとして活動していたなら何も文句は言いませんが、真摯に武術に憧れて門戸を叩いてしまう方に対しては、老婆心ながらあの早抜きは全くなっておらず、むしろ正しく居合・抜刀術を身につけたい方には不適切であることを示さなければ、今のままではネットの勢いに乗った天心流の間違った刀法が世界に広まってしまうと言う危機感を覚えた私は、BABジャパンの担当者からのDVD発刊提案に対し、以下の約束を条件に発刊を承諾したのです。

 

月刊秘伝及びBABジャパンにおいて、天心流兵法を取り上げないこと!!

 

そして私は今現在持ち合わせる私の技術を駆使し、正しく居合術を学ぶための指針となるよう、ゆっくり正確に抜く稽古法を紹介すべく、直門以外には教授するつもりが無かった居合形を、初伝形初伝之抜に限りという内容で発刊したのでした。

「私は一切口を開かない。直門以外に詳細を教えるつもりはない。」との意向を汲み取って下さったBABジャパン様が、DVD動画内ではそれを遵守して下さり、私がDVDをご覧になられる方に必要最低限お伝えしたいことのみを短い字幕で紹介して頂きました。

 

そして今回、何故そのいきさつをこのブログに書き綴るに至ったかと申しますと、多勢に無勢で消沈しきっていた私の意見に賛同するかの如きコメントを、さる日本古武術の大家がブログのコメントにて発信されたからです。

私は歯に衣着せぬ物言いしかできない性分のため、うまく立ち回ることができませんが、かの大家は大変解りやすく、また、当たり障りのない内容で天心流が発してきた稽古や形に対する概念を否定され、また、こうはっきりと記述されました。

「現在の天心流兵法と三日月藩の天心流剣術は何の関係もありません。
これ以上は述べると他流批判になるので、控えます。
研究は常識を以て慎重に。」

更にこう付け加えておられます。

「しかし、関係のないことだけはしっかり伝えてやらなければいけません。
たとえ(天心流と)関係がなかろうと、たとえ素人であろうと、武術史において誤解と錯覚はなりません。」

 

ここでお気づき頂きたいことは、「常識を以って慎重に」「たとえ素人であろうと、武術史において誤解と錯覚はなりません」の言葉の真意です。

その秘められし意味を敢えて深くは記述しません。この記事を読まれた皆様自身で一度お考えになってみてください。

 

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