鐔に見る匠の技と美意識

松に鶴図透鐔
松に鶴と言えばわが国では縁起の良い図柄として知られています。繊細な鏨使いは見事で、透かしの構図も抜群。この鐔を拵に掛け、祝いの席に赴く士の姿が思い浮かびます。

続いては家紋を画題とした鐔のご紹介です。
丸に揚羽蝶紋透鐔
しっとりと潤いある鉄に揚羽蝶紋が透かし彫りされています。我が家の家紋は一番古い時代には揚羽蝶を用い、続いて丸に片喰紋、丸に剣片喰紋を用いてきました。私は好んで揚羽蝶紋を用いていますが、この鐔は妻に商品の仕入れと言いつつ、実は自分の刀の拵に掛けたいと言う思いから手に入れたものです(笑

丸に抱き茗荷紋透鐔
一見鉄地かと思いきや、素銅もしくは山銅製です。丸に抱き茗荷紋を透かし彫りにした鐔ですが、切羽台が他の鐔に比べるとかなり小さい。茗荷紋も常に見る一般的なものに比べると上部の形が異なるので、少し特殊な抱き茗荷紋と言えます。

こうした家紋を画題とした刀装具は、格式高い士が己の家格を誇示せんとして用いたのかもしれません。
私もいつか揚羽蝶紋をふんだんに散らした豪華な拵を自分のために造りたいと願ってやみません。