興亜一心満鐡作 昭和甲申春 ~入手困難な満鉄刀~

興亜一心満鐡作 昭和甲申春 ~入手困難な満鉄刀~
興亜一心満鐡作 昭和甲申春
– Koa isshin Mantetsu saku –
 
正式名称は興亜一心刀。昭和十年代から終戦まで、南満州鉄道株式会社(満鉄)が大連で製作していました。金属は極寒地では脆くなる特性があり、戦闘時のそうした危惧を払拭するために、巨大知識技能集団としての当時の満鉄が、独自に鋼を開発し、極寒地対応の耐寒刀として鍛えたのが満鉄刀で、その強靭さと肥前刀に迫る出来口により、当時から刀剣愛好家に人気が高かった昭和の名刀です。
戦後の日本に於いては、伝統的鍛錬法と材料(和鉄)によらないで製作された刀剣類を、昭和刀・粗悪刀と蔑称し、法的にも所持が出来ないことになっており、興亜一心刀(満鉄刀)もこの範疇に入れられているが、戦中の作刀技法は、武器としての日本刀の製造効率化を図ったものであり、それら全てを単に粗悪品として登録所持できないとする現行法は一日も早く改正されるべき問題です。
特に興亜一心刀が満鉄の鉄道レールをスライスして日本刀形状にした粗悪品だとする謂われのない噂話が、今尚刀剣愛好家内で信じられていますが、満鉄刀は甲伏せ鍛えを効率良く行うために、丸く棒状に鍛えた地鉄に穴を空け、そこに棒状に伸ばした心鉄を差し込んで打ち上げられています。
けして粗悪品などではなく、興亜一心刀の作刀技法は、謂わば新古式鍛錬法と称して良いものと私個人は考えております。
 
今回御紹介致しますこの満鉄刀は、棟に打たれた(イ)五二六の刻印から判るように、満鉄刀鍛造初期の作品です。現状では安価な居合研磨がなされているため、地鉄も刃文もその良さが引き出されていません。
上研磨を施した満鉄刀の地鉄には杢目肌らしきものが見られるため、日本美術刀剣保存協会に於いても、最近では保存刀剣鑑定書を交付すべきか議論検討に至っており、通常ですと「作位低し」や「伝統的な製作技法ではない」と注釈をつけて保存審査不合格になる興亜一心刀の中、「伝統的な原材料や製作技法のものであるか否か研究の余地がある」として保留となった作を、当店ホームページでも過去にご紹介致しました。
つきましては余力有る方、是非とも本刀に上研磨を施して頂き、満鉄刀のレールスライス焼き入れ刀と言った、いわれなき都市伝説を払拭すべく、最高の状態で御所持頂き、後世に残し伝えて頂きたく存じます。
 
裸身重量816グラム。