無銘 ~非常に珍しい雛薙刀 刃長六寸二分二厘~

無銘 ~非常に珍しい雛薙刀 刃長六寸二分二厘~
無銘
– Mumei –
 
子供の誕生と健やかなる成長を願い、五月人形や雛人形を造って節句を祝いますが、泰平の世であった江戸時代、大名家や資金ある豪商の家では、実際に乳幼児や幼児が身に付け、使用できるサイズの甲冑飾りや豪華な雛飾りが造られました。
大人が用いる太刀をそのまま幼児サイズ化したものもあれば、人形用の小さな太刀なのに、ちゃんと本物の刀身が納まっていたりと、その凝り様は様々で、この雛薙刀(稚児薙刀)もその一つ。節句飾りの他の品が逸散してしまった今となっては、想像する他ありませんが、恐らくは甲冑飾り、或いは雛飾りの諸道具の一つとして、大名家または豪商の節句飾りの雛段に添えられていた品でしょう。
 
小板目良く練れて詰んだ肌に、匂口明るく冴えた直刃を焼き上げ、地鉄には映りも現れています。これだけの造りであるにもかかわらず、柄には口金や胴金、鏑巻きや石突金具が供されていないので、恐らく現在附属している柄は、元々休め鞘である白鞘の柄を、後になって塗ったもので、本来附属すべき柄が失われてしまったためによるものと推測され、元は立派な薙刀拵に納まっていたことでしょう。柄の逸散こそ惜しまれますが、なかなかこの薙刀のような本歌の雛薙刀は市場には出てまいりません。非常に珍しい逸品であり、江戸時代の風俗を知る上に於いても恰好の資料。御入手された暁には、是非とも観賞用研磨を施し、しっかりとした薙刀柄も復元製作して、この貴重な文化財を後世に伝え遺して頂きたいと切望してやみません。
 
裸身重量95グラム。  拵に納めて鞘を払った重量158グラム。

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