「刃筋が立てられない」ということ ~藁斬り抜刀斎動画を使って解説~

抜刀道の達人を自称する藁斬り抜刀斎の動画から画像を抜き出して、現代の居合、抜刀を嗜む人の殆どに見られる悪い現象について語ってみましょう。

まずは以下に掲載する写真をご覧ください。上から順番に1~6とします。

 

赤くラインを引いたのが、藁斬り抜刀斎が斬ろうとしている角度です。

水色の線は藁斬り抜刀斎が振り下ろす刀とその角度を表しています。

 

1 振りかぶった時点で既に角度が全く異なっています。赤と青の線を見れば一目瞭然です。

2 斬り込む瞬間の刀の角度比較用写真。ここでも角度は全く合っていません。

3 緑の線は本来あるべき刀の角度ですが、刃筋が立っていないためにS字に刀身が撓っていることが解りますね。

4 巻畳表を裁断通過した刀の真横を青い線でなぞりました。刀に大きな負担がかかっていた、大きく刀が撓っているのが解りますね。

5 横向きに負荷をかけながら斬っているため、巻畳表は向かって右に傾いているのが、赤い線と比較すると解りますね。

6 円で囲った巻畳表の斬口を見て下さい。赤い線に平行ではなく、うねっているのが解りますね。

居合や抜刀(物斬り)を嗜まれる方の9割以上が、実は悪い例として今回挙げました、藁斬り抜刀斎と同じ斬り方をしています。刀が巻畳表を通過するのは一瞬のことなので、気付かない人が多いのです。

このようなことが起きる原因は??

物体を二つに両断することしか頭に無く、武術としての斬り方が全く出来ていない。敵を仮想できていないためです。

このような袈裟斬りをしてくる人の刀は、武術としての修練をしっかりと積んだ人ならかわすことも可能となります。どう言う意味で可能なのか? それは私の道場に学びに来られれば解ります。

また、この動画の中で「抜刀道」を

『「日本刀」で物体を斬る武道』

と表記して紹介されていますが、私に言わせれば、物を斬る武道って何? それってそもそも武道なの?? と言った感しかありません。

刀で巻畳表を斬るということは、それ自体を稽古するものではなく、普段の稽古で如何に理想的な刀の振りができているかを確かめるために行うものです。ですから、一太刀斬り込んでみて斬れない場合は、その時点で巻畳表を使った刃筋確認稽古は中止すべきです。

斬ることばかりにやっけになる刀を使った物斬りは、最早武術でも武道でもなく、単なるストレス発散のためのスポーツと言って良いのではないでしょうか?

武術から逸脱した愚行。だからこそ私は藁斬り抜刀斎をはじめとした単なる斬り屋を軽視するのです。

「刃筋が立てられない」ということ ~藁斬り抜刀斎動画を使って解説~」への2件のフィードバック

  1.  投稿ありがとうございます。
     辛辣な発言をされていますが、納得できます。
     試し切りはやったと言えるほどの経験はありませんが、斬る為に大きく振りかぶったり、斬った後体勢が乱れるほどに力任せにやるのは武術としてどうなのだろう?という疑問がありました。
     今回の御投稿を参考にして後輩に誤った事を伝えないように注意してゆきたいと思います

  2. 私の師匠は、
    “巻藁と人間は違う。巻藁斬りをすれば弱くなる。刃筋が通ってるからどうかの確認くらいの意味しかない。”
    とよく言ってました。
    私はそこまでは言いませんが、刃筋が立たず本来の道を進ませてもらえない刀は可哀想ですね。最近YouTubeに散見される曲抜きというのにも疑問があります。また解説よろしくお願いします。

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