修心流居合術兵法誕生の経緯 3

Mさんとその部下に試斬技術の手解きを開始して二ヶ月。返し業の成功率も上がり始め、道場のフランチャイズに向けて準備が整いつつあったある日のこと、私は精神的にも金銭的にも追い込まれる事態に陥ることとなる。

Mさんが私の女性問題を挙げ、道場フランチャイズ展開に待ったをかけたのです。

人に自慢できることではなく、私を支えてくれる妻を裏切る行為だけに、本来ならこうした公の場に記述するべきではないのでしょうが、様々ないきさつがあって今の私があると考えるので、恥を忍んで記述しますと、当時私は三年近く不貞行為を働いていました。所謂不倫です。

私に妻以外の女性がいることを、Mさんは御存知でしたし、Mさん自身も本妻が居ながら愛人と共に暮らす生活を送っておられました。そんな間柄でしたので、私の不倫相手もMさんと面識を持つようになり、共に道場フランチャイズ計画に参加していました。

全ては己の身から出た錆ですが、早い話が大義名分を掲げた裏切りに遭ったのです。

拙著『最強のすすめ』に記述している通り、私は宗教家ではありません。ただ居合が好きなだけの一人の男に過ぎません。私が宗教家であったなら、女性関係を責められて然りですが、今でも私はM氏とその部下に対しては快く思っていません。

道場を開設する気持ちはないと、乗り気ではなかった私を引っ張り出したのは前述の通りMさんであり、彼が描いた絵図の通りに彼の部下達にみっちりと試斬指導も二ヶ月の間行いました。皆、ある程度実力もつけました。その二ヶ月間、私は昼食や夕食を御馳走になることはあっても、技術の教授料は一円たりとも頂いていません。まるまる二ヶ月間とは言いませんが、二ヶ月間のうちの多くの時間をただ働きさせられたわけです。

本業に費やすべき時間を奪われるわけですから収入も減ります。それだけでも金銭的ダメージは大きいのに、Mさんが私にとった行動は、Mさんとその部下達のために用意した刀、計6振を私に買い戻しさせるというもの。当然試斬稽古に使用した刀ですから、ヒケが入ったり、斬り損じて曲げてしまったりと、研磨も含め、状態は悪くなっています。それを販売した価格で買い取れと迫ってきたのです。

無論そのようなヤクザまがいな要求に応える必要も義理もありませんが、これまたMさんの仕事場兼自宅において、Mさんとその部下達計6人に囲まれた軟禁状態の中、ましてや不倫相手とその両親、また、妻との問題で心身共に疲弊していた私は、

「道場展開計画が完全に白紙になったわけじゃないのだし、今は私達に誠意を見せるためにも一旦けじめとして買い取るべきだ。」

などと言う、Mさん達の執拗で言葉丁寧な脅迫とも受け取れる身勝手な責めから逃れたい一心と、

「Mさんは今はこう言っているだけ。数ヶ月後には言葉通りまたこれらの刀を買い戻して、道場展開に励まれるに違いない。」

といったMさんへの信頼から、結局、傷だらけにされた刀を、数ヶ月間一時的に買い戻すだけのことだと信じ、売った値段で買い戻したのです。

ところがどうでしょう。その後Mさんからは… なんの連絡もありません。ヒケだらけになり、発錆もしたそれらの刀を、再び商品にするために捻出した研磨工作代は、ゆうに75万円を超えました。

心身共に疲弊していたとは言え、あの時どうしてMさんの言葉を信じ、売った値段で買い戻してしまったのか? また、多人数で取り囲んでの脅迫に何故屈してしまったのか? 今も心残りで悔しくて仕方ありません。Mさん達多人数相手に一戦交えようとも、己の信ずる筋を通すべきだったと後悔し切りです。

悪いように考えすぎかもしれませんが、今となっては“Mさんは初めからこうするつもりだったのではないか?”と思えてなりません。要は道場展開というビジネスを始めるにあたって、試斬技術が欲しかっただけなのではないか? 私は担ぎ上げられ、まんまと利用されただけではないか?と。そして、当初はビジネスとして金になる算段であったものが、様々な試斬道場の現実を見るに、採算がとれない。またはさほど儲からないと判断し、何かしら口実を作って自分達は損失が出ない形で計画を反故にしたかったのではないか? 或いは私を追い出した後、他の刀剣商と組んで実際に試斬道場らしきものをやってはみたものの、成功しなかっただけなのかもしれません。

S流(M氏)での出来事、龍心館での一部の門弟との確執、Mさんとの出来事、更には妻と別れて一緒になろうとまで考えていた不倫相手からの様々な嘘の発覚と裏切りで、人を信用することに一種のトラウマを持ってしまった私は、益々対人関係が苦手になっていきました。

二度に渡る事実上の道場設立運営の失敗経験から、私は改めて“居合は己の趣味にとどめておこう”と強く思うに至り、人に教えることはもうするまいと諦めるようになったのです。

 

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