日本刀研磨

日本刀を安易に自ら研ごうとする素人に向けて、また、日本刀研磨の下地について、まとめた動画を作りましたので是非ご覧下さい。

お電話でのお問い合わせは極力ご遠慮下さい

ここのところ、模擬刀や畳表に関するお問い合わせの電話を頂戴する機会が多くなりました。

大変勝手ながらお電話でのお問い合わせはご遠慮頂き、メールでお問い合わせいただきますようお願いいたします。

美術刀剣 刀心は私一人で切り盛りしており、従業員等は一人もおりません。ですからお電話を頂戴しますと、その都度他の作業の手を止められてしまうのです。

私は気分で仕事をする傾向にありまして、調子良く研磨作業をしている最中に電話で仕事を中断させられるのが本当に苦手なのです。電話が終った後にはもう研磨する気持ちも気力も失せてしまうことが多いのです。勿論私個人の問題ですので、この傾向は宜しくないことは承知しておりますが、皆様には御協力いただきたくお願い申し上げます。

真剣に関する御相談も、お急ぎでなければ極力メールでお問い合わせ下さい。

買取等に関するお問い合わせはいつでもお気軽にお電話下さって結構です。

いつもシャッターが閉まっているお店 美術刀剣 刀心

美術刀剣 刀心

私が営む刀剣店“美術刀剣 刀心”は、年中シャッターが閉まっています。

傍から見ると営業しているのかどうかもわからない有様ですが、基本的に営業しています。

何故シャッターを閉めているのかと言いますと、これまた愛刀家精神がそうさせるのです。

美術刀剣 刀心の店舗は南向き。そのため日中は日差しが強いのです。当然ながらシャッターを開けると、UVカット仕様のガラスの甲斐もなく刀の糸や鎧の威糸が焼けてしまうのです。

そのため年中シャッターを閉めているというわけです。

営業しているのかどうか、お客様が解らない問題こそありますが、私は刀や甲冑の保護を優先にする性格なもので…

ですから初めておみえになるお客様は、チャイムを鳴らし、

「今日は営業されてないのでしょうか?」

と不安そうにお尋ねになります。

 

ということで、今回のまとめ…

美術刀剣 刀心はシャッターが閉まっていても営業しています!!

 

尚、急な買い付けや主張で不在になることもありますので、基本的に完全予約制です。

御来店前にはお電話をお忘れなく!!

本来あるべき日本刀研磨を考える…

先日、福島県の将平鍛刀場にて研磨作業に勤しんでからというもの、消えかけていた“刀を研ぎたい”と言う気持ちに再び火がついたようです。

ただ、現代主流の美術観賞用研磨には興味はありません。

将平刀匠が本来あるべき日本刀の姿を追い求めているように、私も本来あるべき日本刀研磨を追い求めてみたいと思ったのです。

そもそも現代の研師は仕事に時間をかけすぎ。預けて数年、酷いところになると十年を超える待ち時間。戦国の世なら戦が終ってしまいます。

鉄肌拭い研ぎも研師によって色々と拭いの調合秘伝があるのですが、これって本来おかしなことなのではないでしょうか?

悪く言えば偽物作りのための研磨と言えなくもありません。拭いを調合することによって鉄の色を人工的に変化させてしまうのですから…

時代が遡る刀に見せたい。二流刀工の傑作を一流刀工の作に見せたい。そんな邪な考えから拭いの調合が生まれたのではないでしょうか?

私は刀剣鑑定家の高山武士先生に

「町井君、拭いは鉄肌だけでいいんだよ。磁鉄鉱やら孔雀石やら色々調合する研師がいるけれど、それじゃその刀本来の鉄色が損なわれるじゃないですか。」

と言われた一言で眼が覚めた気がします。

その刀をその刀らしい姿に仕上げる。他の刀に見えるように仕上げる必要はない。

現代の研磨はいずれも大名仕事です。江戸時代、街中を闊歩する侍達の刀が、今現在見るような研磨をかけられていたとは私には思えません。

将平鍛刀場にて次々に下地を仕上げる私の姿を見て、将平刀匠は

「町井さん仕事早いね~」

と驚かれると同時に

「今の研師さんは皆時間かけすぎなんだよね。」

と仰いました。私も大きくそれに頷きます。

手抜き甚だしい安研ぎではなく、しっかりとした下地、しっかりと砥石を効かせた研磨であって、4日程で仕上げることができるのではないかと…

美術研磨の場合は、刃肌が見えるほどに内曇を引き込み、鎬の針がけも下針、上針と手間をかけるものですが、武器として損傷すること前提の刃物に果たしてそこまで手間隙をかける必要があるのか?

仕上げの段階でヒケ一つ入れば砥戻しをする現代研ぎ。ヒケ一つあったからと言って切味に影響はありません。一つ前の砥石の目を完全に消しさる程度に石を効かせただけでも、じゅうぶんに観賞には耐えうる刀に仕上がるはずです。

刀の売買や居合の教授、その他メディア出演など、なかなか時間を作ることができませんが、折を見て、最短何日でそれなりの研磨ができるのか試してみたい…

真の日本刀とは効率良く、大量生産できる体制が一番大切なのだと思います。

将平鍛刀場での研磨作業

24日から4日間、福島県にある藤安将平刀匠の鍛刀場で研磨作業に勤しんでおりました。

長男を一週間程将平刀匠に預けており、藤安先生に御迷惑をおかけしてはいないか、その様子を見るためでした。

何かと忙しく、数日も留守にすることは手痛かったのですが、とりあえず藤安先生のお宅でもできる作業をと、今回は砥石と打卸刀身4振を持参。

1日1振を目標に金剛砥120番での下地研磨を開始。

 

10月25日 1振目の下地完成。

20161025-1

20161025-2

20161025-3

10月26日 2振目の下地研磨完成。

20161026-1

20161026-2

20161026-3

10月26日 3振目の下地を開始するも、なかなか思うようにはかどらない。

20161026-4

明けて27日午前3:30頃、ようやく3振目の下地完成。

20161027-2

20161027-3

20161027-4

20161027-5

因みにこちら↓が研磨途中の3振目。上の写真と比較して頂ければ、研磨工程がよくお解かりいただけるかと思います。

20161027-6

更に4振目を手がけ、明けて28日午前5:30頃、ようやく4振目の下地研磨完成。

20161028-1

20161028-2

20161028-3

 

20161027-10

今回の研磨作業で出た砥石の屑。真新しい砥石を持っていったのですが、大きさは三分の二ほどになっていました。

20161028-4

全てのノルマをこなし、28日午前10:00頃、藤安先生のお車を私が運転して、夜10:00兵庫の自宅に到着。

ハードな数日を過ごして帰ってきた私に待っていたのは、鬼のようにたまっているメールと仕事の数々…

当分たまっていた仕事をこなすのに忙しくなりそうです。

金剛砥120番の時点で下地を決める

金剛砥120番での下地研磨

120番の荒い砥石でここまで横手を立てる研師は少ないと思う。
下手すると取り返しがつかなくなるので、大抵の研師は細かい砥石になってから横手を決める。
腕に自信がなければここまではできない。
日本刀研磨は仕上げよりも下地が一番大事‼️

刀屋が集う市場に出向くと、実に様々な刀剣に出逢える。

出来がずばぬけたものもあれば世にいう鈍刀まで実に多彩。

人気があるのはやはり二尺三寸を超える長寸の刀。拵が附属していれば尚最高。競り値も高くなるものです。

そのような長寸の刀を手に、刀屋さん達がよくこう言われます。

「反りが浅すぎるなぁ」
「反りが深すぎるなぁ」

なぜこのような言葉が出るかといえば、世の居合抜刀を嗜むお客様方が、皆揃って六分反りを好み、それを基準とするからでしょう。

そのため長寸刀であっても有名工の作品でなければ、反りが深いもの、浅いものは比較的安く仕入れることができます。
そのような刀を狙う私にとっては御の字でありますが、正直な心中を語りますと、居合抜刀などを嗜む武辺の者が、反りの深い浅いで刀を選り好みするのは如何なものかと思うのです。
勿論、自分好みの一刀と言うものがあるとは理解しますが、私はこれまで刀を選り好みして使ったことがないものですから、そこのところの心境が解らないのです。

手元にある得物を使う。ただそれだけしか考えたことがありません。

反りが深く、試斬稽古に不向きな刀であっても、手の内次第で六分反りの刀と変わらず使うことができます。
反り浅目の刀は姿が日本刀らしくないと思われるから人気がないのかもしれませんが、素人が使っても刃味鋭いのは寛文新刀のような反りが浅い刀です。

切先が小さいと頼りないと思う人も、先幅が広いほうが良く切れるという人もおられますが、道具頼りではいけません。

私が普段使う将平は一般的な現代刀に比べると物凄く細身ですが、私はこれで隙間を空けて五本並べた畳表を袈裟にも切り上げにもします。※密着させた多本数と隙間を空けた多本数では隙間を空ける方が難しいのです。
刃肉平肉は豊かについており、けして肉は削ぎません。

ところが物斬りをされる方は、何故か平肉と刃肉を枯らすよう研師に依頼するのです。

平肉と刃肉を枯らしては、刀としての機能を発揮できません。
減らした肉は元に戻すことはできないのです。人のように食っちゃ寝してるとまた肉がつくというわけではありませんからね。

肉を削ぐのではなく、入念に内曇砥を刃先にかけてください。そうすれば肉に対する考えは変わるでしょう。
安い研磨ではなく上研磨の改正またはさっと内曇をかけたくらいで止めてもらってお使いになると、驚く程切味が鋭く変わることに気付かれるはずです。

刀 岡田兼定作

刀 岡田兼定作
刀 岡田兼定作
http://nihontou.jp/choice03/toukenkobugu/katana/521/00.html

栗原彦三郎先生は、現代刀の普及啓蒙と多くの現代刀匠達の、たっての強い希望により、昭和17年(1942)に現代刀匠の暫定位列表を定められました。帝展、共進会、新作日本刀展覧会などの得点表・受賞歴などを基礎に300余名の現代刀匠が掲載されており、作位は「神品の列」「貴品上位」「貴品の列」「上工の上位」「上工の列」「良工の上位」「良工の列」の七段階に分けられました。
この刀を鍛えた岡田兼定は、その位列の中で 【 良工の上位 】 良業物 小結格に名を連ねる刀工で、美濃伝らしい尖りごころの互ノ目乱れを、二つ一つ一組に、規則正しく、且つ、匂口明るく冴えた刃を焼いています。
当時の軍刀寸法で打たれた刀だけに、現代人には短い寸法ですが、しっかりとした拵に納まってこの価格なら大変お求め易いはず。これから刀剣趣味を始められる方や、短寸の居合武用刀をお探しの方に、期間限定にて応援価格で御紹介致します。是非この機会にお求め下さい。

裸身重量777グラム。 拵に納めて鞘を払った重量1,034グラム。

刀のメンテナンス

刀のメンテナンス
~渓流詩人さんのブログから~
http://blog.goo.ne.jp/kelu-cafe/e/39a5d111e4f01336c38cd46030518cec

今回の記事も大変勉強になる内容ですので、是非ご一読ください。

尚、渓流詩人さんの記事に私なりの補足を加えさせていただきますと、経木を鯉口内部(はばき袋)に貼る場合は、必ずしも棟方とは限定せず、刃方も減っているようであれば刃方にも貼ると言った、臨機応変な対処が好ましいです。
どういう事かといいますと、刃方も減っているのに棟方ばかりに経木を貼ると、鞘と柄に段差が出来てしまい、見栄えも悪いばかりか、減った刃方に負担をかけてしまうのです。
渓流詩人さんのように上手な居合をされる方は、専ら棟方のみが磨耗するので棟方のみに経木を貼られていますが、下手な人の居合は刃方をよく減らすので、経木貼りには上下のバランスを見る注意が必要です。
文面だけでは解り辛いかもしれませんので、以下に掲げます拙い手書きの図解を御参照ください。

経木貼りの注意点

また、素人ならまだしも、居合を嗜む人に多いのが、経木をはばき袋の表裏に貼ってしまう無知な修理です。これは絶対にしてはいけません。ははばきは上下(もっと厳密に言うと四つ乃至五つの角)で鞘に納まっています。それなのにはばき袋の表裏側に経木を貼ると、鞘の合わせ目に大きな負担がかかり、糊付け面がパックリと開いてしまったり、白鞘の場合ですと、それが原因で糊付け部分から真っ二つに割れてしまいます。

自分でメンテナンスが出来ない人は、しかるべき職人に任せて修理してもらってください。
くれぐれも素人や無知な人は、いきなり刀のメンテナンス作業は行わないことです。正しい知識と技術を持った人からちゃんと教わって修理のいろはを覚えましょう。

凄まじい将平刀の切味


動画、ご覧になれますでしょうか?
6月18日、19日の両日に行われたテレビ収録後の将平刀の切味です。

番組が放送されるまで、どのような物を斬ったのかはまだ発表できませんが、通常の日本刀なら刃こぼれをきたし、物によっては一撃で折損しているものと思われます。
そんな難物に斬り込む事数十回。

テレビスタッフの皆さんも、将平刀の凄まじい切味に驚かれていました。

「日本刀って強いんですね~」

確かに日本刀は強いのですが、全ての日本刀が強いわけではありません。
将平の刀が優れすぎているのです。

正直私と将平自身が一番驚きました。

斬り込む物が物だけに、刃こぼれは免れないだろう。場合によっては折れるかもしれない。
私も将平も、そしてテレビスタッフもそう考えていましたので、リハーサル用、本番用と、今回の収録では三振の刀を用意していたほどですから。

御様御用の山田浅右衛門も将平を試せば驚きを隠せないことでしょう。最上大業物より更に上の業物指定をするのではないでしょうか?
益々将平に惚れました。

将平刀の御注文は美術刀剣 刀心へどうぞ。
※将平は美術刀剣 刀心お抱え工につき、将平刀匠個人への直接の御注文はできません。