稽古漬け

北海道から来る門弟のために、11時から15時まで稽古をつける。

門弟は全日本居合道連盟七段の有段者ですが、今の現代居合(無雙直傳英信流)に疑問を感じ、昨年から修心流居合術兵法の末席に名を連ねました。

稽古では初伝形と中伝形を稽古。

連盟居合で長年培った動きが、理想とする動きの習得を邪魔します。

本人もこの癖を取るのに相当な時間がかかるであろうとは自覚している様子。

気になるのは抜付時の鯉口を握る左手首。どうしてもここが曲がるのです。

門弟は全居連では上位入賞を果たす実力の持ち主ですが、悪く言えば所詮は形居合。実戦では使い物にならないのです。

丁寧に指導しながら、本来の形の意味、その作用を教授。

初伝形十一本目『抜打』と中伝形十本目『真向』の明確な違いや中伝形四本目『浮雲』における身体捌きを特に重点的に稽古させました。

故岩田憲一氏の居合教本には、『抜打』と『真向』は同じ業故省略す。などとありますが、全く同じ想定であれば、名を変え形種目に残るはずがありません。

実はこの両者の形の明確な違いを一言で説明できる指導者が少ないのです。

決定的な違いは敵との間合い。

修心館ではその間合いを、『抜打』では畳一畳分、『真向』では畳半畳分と教えています。

約90センチ間合いが違うわけですから、『真向』では『抜打』と同じように抜きかけては敵に柄や腕を捕られてしまいます。

そこで上方に向けて抜きあげることを教える指導者が多いのですが、修心流居合術兵法では真向も抜打も、どちらも水平に抜き上げるのです。

更に詳細に説くならば、『抜打』では膝で抜き、『真向』では股関節で抜くと教えています。

その理合通りに抜けば、両者は似て全く非なる形となります。それは居合のことを知らない素人が見ても一目瞭然です。

続いて『浮雲』での大切な所作。

夢想神伝流等では理合が異なるせいか、修心流居合術兵法の立場から見るにとても不合理な柄捌きとなっていますが、修心流居合術兵法での形想定は、己の右隣に最低でも二名が立膝にて座し、真右隣の者を隔てた更に右隣の者が、さっと前に出ると同時に己の刀の柄を捕ろうとするのを立ち上がりながら捌きます。敵は己の真右隣の者の横、つまり、元の位置に身を隠しながら抜刀の準備に入ります。己と敵の間には争いに無関係である者がいるため、この者を排除しなければ戦闘できません。そこで敵を攻撃するのに障害となる右隣の者をその場から前方へ押し出しすわけですが、この動きが全居連でも全剣連でも出来ている方は、僕が知る限りほぼ皆無です。

どのような柄捌きとなるのか? 身体捌きとなるのか? については深く触れませんが、過去にその稽古風景を納めた動画がYOUTUBEにあげてありますので、ご興味ある方はご覧になられると良いでしょう。

二つ目の動画の最後の方で、門弟柳原君が受身をとる姿が納められていますが、これは押し出される右隣の者の理想とする、戦闘の場からの回避のためのもので、本来は大刀を帯刀したままでの前廻受身となります。

修心流居合術兵法では古の無雙直傳英信流本来の姿を求め、形居合も一つ一つ理合に基づいた稽古を指導しています。

ついでなので過去に掲載した『惣留』の指導風景も御紹介します。

 

15時以降は門弟と昼食と夕食を兼ねた食事を二人で楽しみ、仕事の都合で30分遅れて19時30から大阪豊中道場での居合教授。

こちらでも初伝形と中伝形を指導し、後半は巴請(下に紹介する動画参照)と、袋撓(ふくろしない)による自由組討を行いました。自由組討とは空手で言うところの組手です。互いに小手、水月、臑や膝裏など、隙を狙ったり、誘って仕掛けたりと、剣術模擬実戦の稽古を楽しみました。

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