http://nihontou.jp/choice03/toukenkobugu/katana/531/00.html
寿命(としなが)と極められた一刀。うぶだし品につき所々に変色程度の錆が出ていますが、非常に良い研磨がなされているため、敢えて手をかけずそのままお楽しみ頂ければと思います。
緻密に練られた地鉄は柾目目交じりで肌立ち、そこに一際黒い地鉄交じっています。匂口は明るく冴え、刃中も深く沸え砂流や金筋などの働きが顕著。
昭和26年の大名登録刀で、都道府県名での登録ではなく、文化財名義での登録となっています。さぞ名のある大名家の蔵刀であったことが窺がわれ、その後も大切に伝来してきた様が垣間見られます。
ただ、惜しいかな帽子先端の方に刃切が一つございます。刃切ある刀は折れ易く価値が無いと誤認されるようになったのは、江戸中期も後半になってからのことで、刀剣学者である鎌田魚妙(かまたなたえ)が唱えだしたことと言われています。
現代における引っ張り強度実験に於いても、よほど大きな刃切で無い限り、刃切有る箇所から折損することはなく、鎌田魚妙の無知な見解が今尚刀剣界では引き継がれ、「刃切=無価値」とのレッテルをぬぐうことができず、数多の名刀が刃切があることを理由に切断廃棄されたり、埋鉄の材料等にされています。
そう言う意味では鎌田魚妙程罪な人は居ないと言って過言ではありません。
今の時代、正しく刃切を認識し、刃切有る刀の地位名誉回復を今後の刀剣界に期待したいものです。
刃切は研磨で除去可能ですが、折角の姿を崩してしまいますので、つきましては現状のまま、この御刀の真の価値を見てくださる方にお譲りしたく思います。安価で御紹介するも、試斬にお使いになられる目的の方への販売は硬くお断りさせていただきます。
※刃切有る刀が実用に際しても問題が無い証拠として、前田利家の愛刀“丈木”が挙げられます。
丈木と号がつけられたこの太刀は、享保名物帳にもその名を連ねる名刀で、以下のように記載されています。
『丈木 太刀なるべし 松平加賀守殿 高倉宮の御内、長谷部信連の子孫より出る、北国にて箸にする木を丈木と云ふ、背中に立に負ひ行くなり其内の者を切るに、丈木ともに切り留る故の名なり、長氏気短き仁にて家来を呵りながら釜の鏆なり、爐(いろり)の縁にてきざまれ奇妙に切れるものなり、刄切七つあり利常卿御秘蔵の御差料なり』
裸身重量647グラム。