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刀 兼定(銀象嵌銘) ~附 朱乾漆石目地夕顔文抜塗鞘打刀拵~
兼定は孫六と並び称される美濃刀工で、関七流奈良太郎系の鍛冶と言われています。
初代兼定は三阿弥兼則の子で兼長に学び、子の二代兼定(之定)、孫の三代兼定(疋定)と区別するために「親兼定」と呼ばれます。
二代兼定(吉右衛門尉)は「定」の字をウ冠の下に「之」と記す独特の書体で切ることが多いことから、「之定」(のさだ)と通称され、孫六兼元と並んで「末関」の双璧をなし、永正8年(1511年)に「和泉守」を受領。
斬味では最上大業物としても名高く、江戸期には「千両兼定」とも呼ばれ、数多の著名武将が好んで所持しました。有名なところでは武田信虎、織田信澄、柴田勝家、細川忠興(三斎)、明智光秀などが所持したほか、池田勝入斎の「篠ノ雪」は高名です。
三代兼定は銘の「定」字を「疋」と切ることから「疋定」(ひきさだ)と通称されています。
この刀は兵庫県下の旧家より出たうぶ品で、指裏の帽子に一部錆、所々にヒケが見られますが、刀自体の出来は非常に良く、杢目肌良く練れて肌立ち、匂口に沿って乱れ映りが判然と立っています。匂口は明るく、尖りごころの互ノ目を交え、焼き頭は締まりごころに、谷はよく沸づいてふわりとし、足盛んに入り、金筋砂流かかり、見所多い出来口となっています。
附属の拵は銀無垢の牡丹図揃金具を贅沢に用い、朱乾漆石目地に夕顔文を抜き塗りした、粋で落ち着きある鞘塗に仕上げ、布地片手巻の柄には全体に黒漆がかけられ、強固な印象を与えるも、水辺芦鷺図の目貫が無骨な中に柔らか味を感じさせます。鐔は鉄地の雲文透波貝図で耳には銀覆輪をかけ、切羽は上下四枚組とし、中に納まっている銀象嵌銘兼定刀に相応しく、実用面を重視しながらも、上品且つ豪華に仕立てられており、質実剛健なる細川忠興を連想させる逸品です。
裸身重量721グラム。 拵に納めて鞘を払った重量1,068グラム。