無銘(尾張関) ~明るく冴えた地刃見事な一刀~

無銘(尾張関) ~明るく冴えた地刃見事な一刀~
無銘(尾張関)
– Mumei(Owariseki) –
 
尾張関は美濃國から尾張國に移住して繁栄した一派で、中でも相模守政常、信濃守大道、飛騨守氏房、伯耆守信高が著名です。
 
この刀は鎬地と刃縁が柾流れた杢目鍛えの地鉄が肌立ち、地景入り、匂口明るく冴えた互ノ目乱れを焼いた作品。刃縁には大粒の沸が微塵に絡み、指表は角張った互ノ目乱れ、指裏には兼友や兼房を偲ばせる兼房乱れ風の互ノ目を焼いており、こちらもどこかしら角張った感のある刃取構成で、大粒の沸の付き方などは信高を思わせる出来口です。
 
付属の拵は保存状態良く、鞘には目立つ凹みも見られません。柄頭を角で製作し、返角が取り付けられているところを見ると、登城指の大小であったのでしょう。金具は植物を題材にした仕事の良い物が添えられており、特に縁金具の極小魚子は、気が遠くなる程に根をつめた作業で造り上げた力作。縁には縄目模様の台まで設けられた手の込みようで一政在銘。目貫も刀に相応しい大振りの物が添えられ、鐔は記内在銘且つ、記内が得意とした葵図透かし。
はばきと切羽は痛みが目立つため、当店にて新調し直しましたがそれ以外はうぶ伝来のままで、縁金具を外すと細かな文字が見られます。なんとか判読できる範疇のみ記載しますと、『一三号拵付 古○○ト金?○ 小野了?所用了? 二○の黒糸』と読めます。
町人が隆盛を見、士が貧困を極めた江戸時代、十三振以上の刀剣を所有し、これだけ仕事の良い拵に納められた刀を腰に指せたところから察すると、尾張徳川家の縁戚にあった者の指料であったのかもしれません。
※銀はばきは拵主体に新調しておりますので、白鞘に移しますと極僅かな隙が空きます。
 
裸身重量679グラム。  拵に納めて鞘を払った重量967グラム。

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