隙
武術の世界や生活の中でもよく耳にすることがあると思います。
隙とはなんぞや?
皆さん考えられたことはあるでしょうか?
攻撃できる機会。反撃できる機会。
そんな答えが聞こえてきそうです。確かにそう言う意味合いもあるでしょう。
今回は私なりの隙について語ってみたいと思います。
因みに日頃私が欲しいものは、同じ隙でも、私への愛情が冷めてしまった妻からの「好き」なのですが(笑
さて、冗談はさておき本題に入りましょうか。
昔の人は本当に物事を上手く表現したなと感心せずには居れません。武術における隙とは、文字通り隙間を意味する隙。そのためアイキャッチ画像を少し開いたドアの写真にした次第です。
武術における隙については動画で解説すれのが一番手っ取り早くご理解頂けると思うのですが、ここは敢えて文字だけで表現しましょう。
全身と半身が正しく使いこなせることを前提にお話しします。
全身のまま胸の前で掌を合わせてみてください。ちょうどお祈りするような形です。
少し脇を締めるように意識して、腰を回転させてください。
掌の間が開き、隙間ができましたでしょう?
それが「隙」なのです。
※因みに刀心スタッフS君は武術の概念がないため、手を合わせたまま上半身だけ回転したので掌に隙ができませんでした。やはり言葉だけでは何を説明しているのか難しいのかも… でもそれでいいのです。考えることが大事だから。
大きな隙間は拳がすり抜けられます。
小さな隙間だと拳は通りませんが、重ね数ミリの日本刀なら簡単に通り抜けてしまいますよね。
如何に小さな隙であっても、そこに日本刀が通過できるだけの隙間が出来てしまうと、実戦では命を落とす結果になります。
では次に、半身をきるという動作が正しくできる方、同じように掌を合わせた状態で、半身をきってください。
左右の掌は上下前後に動きますが、自分の中心に残ったままになっており、隙間ができないことがお解り頂けるはずです。
このことから何が言えるかと言いますと、武術に横の動きは不適切ということです。
薙刀や長巻を使った試斬動画を稀に見かけますが、薙刀を横から出していますよね。
これ、武術としての観点から言いますと… 「ありえない…(by 湯川学)」 なのです。
動きが全て見えるばかりか、上で解説したように隙が出来てしまうから。
昨今の居合や剣術を見ると、腰の回転が目立つ人がとても多く、指導者ですらそれに気付けていないのです。
抜付で鞘の鯉口が外に開いている人はその典型。
私は他流のことはあまり知りませんが、全剣連系の英信流、夢想神伝流の居合演武をされる方に、鞘引きではなく鞘開きになっている方が見かけられます。
これ、即ち抜きつけているのではなく、自ら隙を作っているだけと結論づけることができるのです。
僅か数ミリの隙さえ作ってはいけない。
相手に差し込まれる(刺し込まれる)隙を作ってはいけない。
武術においてこれは一番大切なこと。中心軸を意識するだけで、居合のみならず、あらゆる武術は上達します。