田中金次郎吉隆
– Tanaka Kinjiro Yoshitaka –
https://nihontou.jp/choice03/toukenkobugu/katana/1564/00.html
手元銘鑑に田中金次郎吉隆の名が見当たらず、銘鑑漏れの刀工と考えられます。
元先の幅差開いて切先やや延び、反り浅目。重ね薄目にして鎬幅狭い造り込み。
地鉄は小板目よく練れて詰み、地沸付いて地景入って精美。刃文は匂口明るく冴えた互ノ目乱れで、下半はふわりと柔らかい印象を与え、上半では匂口がキリリと締まり、刃中には砂流や金筋が見られ、足よく入る。鋩子は横手上迄乱れ込み、先直ぐに丸く横手迄焼き下げる。
新刀期以降、実戦経験ある者が姿を消し、力をいなすと言う日本古来の剣技を失った士達は、当時流行った刃味の格付けばかりに眼が行き、相手と打ち合った際に変形し辛いようにと、重ね厚い刀を求めるようになった。そうした頑丈な姿の刀が好まれた江戸後期に於いて、本刀は余程腕に覚えある士の需めに応じて鍛えられたものであろう。重ねは薄く、鎬幅狭い造り込みは、しっかりと刃筋を通すことが出来る剛の者が用いることで、恐ろしい程の抜けの良さを発揮する。その様はまさに、リベットの頭迄削り落とし、極限の軽さを実現した大東亜戦争時の零戦と同じ。手元重心でバランスも非常に良く、片手操作に於ける抜付も繰り出し易く、元先の幅差開いた切先は、鋭い刺突にも適している。
本刀を腰に帯びていた士の技量の高さを現代に伝えるこの一刀は、地鉄の完成度も高く、特筆すべき鍛錬疵もありません。
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裸身重量580グラム。
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