7月 2017のアーカイブ
とある日の町井勲 ~美術刀剣 刀心スタッフS君の目線から~
現在、美術刀剣 刀心の業務を手伝ってくれているS君が、昨日の私の業務?の様子を動画にしてくれましたので紹介させていただきます。
長編のため、二倍速にて編集してあります。
使い手は作り手の心を知るべし
私が全居連他、各連盟に所属していた頃、演武大会のみならず、日頃の稽古の場に於いても常に目に付いたのが、刀をぞんざいに扱う人が多いことです。
御本人は大切に扱っているつもりなのかもしれません。しかし愛刀家目線から言えば、無礼千万な扱いがとにかく多いのです。
居合の稽古で真剣を扱っている方の殆どが、一時間あるいは二時間の稽古中、油を引きなおすことを殆どされません。稽古前と稽古後に申し訳程度に油を引き、鞘を引っくり返してトントンと鞘の中の削りカスを出す姿のみが見られます。
以前にも書きましたが、私が居合の形稽古で真剣を使っていた頃は、形を二本から三本抜いたら、必ず油を引きなおしていました。そのため私の刀には錆はありませんでしたが、先輩や後輩、そして館長の刀はと言えば、棟に多くの錆が見られるのです。
私は居合で真剣を扱う方全てに言いたい。
一度ご自身で刀を研いでみろと。
勿論本当に自身で研磨されるような愚行をされてはいけませんよ。私が言いたいのは、たった一振の刀を研磨するのに、どれだけの労力と時間がかかるか、どれだけの技術を要するかということ。
私は自身でも刀を研ぎますので、研ぐ側の苦労は本当によく解ります。
精魂込めて研ぎあげた刀をぞんざいに扱われる程、研ぐ側として悲しく虚しいものはありません。
小さなヒケ一つ残さぬよう磨き上げた刀に、ヒケ傷をつけられた時の悔しさと言えば言葉にならないものです。
当然ながら逆のことも言えるわけで、作り手は使い手のことを考えて誠心誠意の仕事をしなければなりません。当たり前のことなのですが、今の時代、この当たり前が欠如しています。
柄巻きに預けた刀が戻ってきて、逆目貫(目貫の表裏が逆)になっていたことがありました。勝負事に使う刀のことですから、古の士は目貫の向き一つですら拘ったものです。逆目貫は敵に対して逃げになってしまい、縁起が悪い。当然私もこのような柄巻きではお客様にお納めできないと、柄巻師に返送し、正しい目貫の方向で巻き直してもらったのですが…
再び届いた柄には、新たな請求書が同封されていて絶句しました。
柄巻師当人のミスで納期が遅れたにも関わらず、二回巻いたのだから二回分請求って…
そういう職人さんとは二度とお付き合いは致しませんし、何よりも、大切な刀を預ける気持ちにすらなりません。
でもね…
今の時代、このような職人とも呼びたくない職人が増えました…
これも時代の流れということでしょうか… 目貫の表裏を指定しないこちらに非がある扱いをされてしまいます。悲しいことです。
一 マサヒラ作 ~藤安将平による一文字写しの太刀~
成高 マサヒラ作 ~那須与一佩刀 柄曲がり成高の忠実なる写し~
将平作 古備前写しの太刀
将平作古備前写
– Masahira saku Kobizen utsushi –
http://nihontou.jp/choice03/toukenkobugu/tachi/054/00.html
昭和50年福島県立子山に鍛刀場を開設して独立。以後作刀の研究修練を重ね日本美術刀剣保存協会優秀賞3回、奨励賞6回、努力賞7回を受賞。平成2年には日本美術刀剣保存協会会長賞受賞。同14年日本美術刀剣保存協会寒山賞を受賞。
尾張熱田神宮、奈良護国神社など多くの神社で奉納鍛錬を行い、平成20年には、704年、佐備大麻呂の作剣以来、およそ千三百年ぶりに常陸鹿島神宮において日本刀奉納鍛錬を行う。
昭和59年秋には伊勢神宮第61回式年遷宮、御神宝太刀謹作奉仕の大役も担い、 先の震災で大きな被害を受けた福島県南相馬の御刀神社復興支援にも大きく尽力され、御神宝となる直刀を謹作奉仕し、直近では福岡の宮地嶽古墳出土大直刀の復元鍛錬など、現代日本刀匠屈指の作刀技術を持っている。
平安、鎌倉時代の古刀剣再現への強い想いを持ち、長年研究修練に取り組み、国宝、重要文化財やそれに類する刀剣類、全国の砂鉄や鉄文化の知識見識も豊富で、太刀、刀、短刀、脇指、薙刀、古代直刀など、どれを手掛けても正確で美しい刀姿を造り上げる。
地鉄、焼刃の手際も鮮やかで幅広い製作能力を誇り、中心鑢や銘文といった中心仕立ても現代刀匠随一で、師である行平没後、師の実子である宮入小左衛門行平(宮入恵)を預かり、弟子として鍛刀修業を積ませた経緯からも、師の信任が厚く、その技量の高さを物語っている。
近年は奈良正倉院収蔵の直刀、手鉾のなど奈良時代の刀剣類の研究、復元製作にも取り組まれ、上記の御刀神社奉納直刀の焼刃などは神域に入られたと言っても過言ではない。
刀心店主、町井勲(修心流居合術兵法創流者、居合に関するギネス記録を6つ保持している)が最も信頼を寄せる現代屈指の刀匠としても知られ、将平刀はテレビ番組内で町井の手によって、鉄パイプ、鉄板切断など日本刀の本分である利刀(折れず曲がらずよく切れるの三事)としての能力も非常に高いことが証明されている。
また将平刀匠は弓、弓道にも深い造詣を持たれており、京都の御弓師柴田勘三郎氏とも長年に亘る親交があって、地元福島では弓術の指導にもあたっている。
人格そして技量に於いても、人間国宝や無鑑査に認定されるべき人物だが、表の世界に出るのを拒み、今尚福島県立子山で黙々と作刀研究に勤しむ生粋の職人肌刀匠である。更なる詳細はこちらをご覧下さい。
この太刀はうぶ姿の健全なる古備前を模して鍛えられた太刀で、反り高く、豪壮且つ優雅な立ち姿に、緩やかな雉腿中心が印象的。匂口は明るく冴えた小乱れを焼いており、近頃古刀再現に関して悟りの境地に立たれたと表現しても過言ではない、将平刀匠の技術を駆使した一刀。研ぎ上がりが待ち遠しい秀作です。
美術観賞用上研磨を施し、素銅地菱形金着はばき、上白鞘を誂えてお納め致します。拵の御相談もお気軽にどうぞ。
裸身重量 783グラム。※打卸状態での裸身重量計測につき、研磨完了後は幾分軽くなります。