5月 2017のアーカイブ
濃州関住兼時作之 昭和壬子年仲秋吉日
父である兼道(小島時二郎)に作刀を学び、後に渡辺兼永の下でも作刀を学びました。祖父兼時の名を襲名し、二代兼時となりました。奨励賞、努力賞入選多数。実力ある現代刀工です。
この刀は無疵無欠点で、良く練れて詰んだ精美な地鉄に匂口冴えた丁子乱れを巧みに焼き上げた、兼時刀匠会心の一作。足・葉頻りに入って細かく乱れる。
いかにも丁子刃と言わんばかりの仰々しい丁子を焼いた現代刀が散見される中、この刀の丁子は非常に落ち着きがあり、上品な仕上がりになっています。
居合用として鍛えたものではなく、美術鑑賞刀として入念に鍛えられたことは、上の出来もさることながら、丁寧に仕立てられた中心と、細鏨で力強く切られた銘振りからも窺がえます。
鞘を払った重量が1,090グラムと非常に頃合で、しかも手持ちバランスが良く、全てにおいて完璧に纏め上げられていますので、美術鑑賞用としても、また、居合武用刀としてもご堪能頂けます。
疵が無く、綺麗でしっかりとした出来口の一刀をお探しの方に心よりお薦め致します。
裸身重量822グラム。 拵に納めて鞘を払った重量1,090グラム。
土佐守藤原正信
肥州河内大掾藤原正廣(四代)
肥州河内大掾藤原正廣(四代)
– Hishu Kawachidaijo Fujiwara Masahiro(4th generation) –
http://nihontou.jp/choice03/toukenkobugu/wakizashi/361/00.html
四代正廣は友之進と称し、正廣家三代目の子で延宝三年の生まれ。宝永元年に没した父の跡を継いで家督を相続し、宝永五年の河内大掾受領を機に銘を改めました。宝永七年には、忠吉及び行廣と共に幕府から朝鮮通信使への贈り物とされる刀剣の製作を命じられているように、高い技術を備えて肥前鍋島家に仕えていました。
正廣家は初代忠吉に養子として迎えられた吉信の子に始まり、山城伝直焼刃を特徴とする忠吉一門とは作風を異にし、相州伝を基礎とする乱刃を得意としましたが、基本にある地鉄鍛えは、微細な地沸で覆われて緻密に詰み、江戸期肥前刀の代名詞である小糠肌となります。
この脇指は、中心千両の言葉に相応しいスキッとした中心に、程好く反りが付いた美しい体配を誇り、切先は延びごころで鋭さを感じさせます。
地鉄は小板目肌が良く練れて詰むも少しく肌立ち、地沸付き、地景入り、匂口明るく冴えた湾れ基調の互ノ目乱れを焼いており、刃縁に砂流や金筋、足等の働きが顕著に見られ、四代正廣の技量の高さを誇示する出来口で、時代物の金着せはばきが伝来の良さも物語っています。
裸身重量579グラム。
若狭守藤原氏良
筑前住山口安宗作 昭和丙寅年八月吉日 ~美術観賞用上研磨完了!~
一龍子作(長光)
戦時中岡山刑務所の所長であった江村繁太郎は、模範的な受刑者の更生を願い、市原一龍子長光を招聘して受刑者に先手をさせ、刑務所内に於いて数多の日本刀を鍛錬しました。
そのため俗に市原長光の作は、世上、「監獄長光」と言われていましたが、岡山刑務所で鍛えられた作には「江村」と銘切られていたため、長光個銘の作を指して「監獄長光」と呼称するのは間違いと言えます。
戦時中という世情もありまともな美術研磨を施された作品が少ないため、単に本鍛錬軍刀の一つと括られ勝ちですが、入念なる研磨を施して見るとその技量の高さに誰もが驚く昭和の名刀で、利刀としての評判は当時から高く、陸軍受命刀工としても活躍しました。
この刀は見幅広めで重ね厚く、松葉先もしっかりと張って切先が延び、如何にも物斬れしそうな豪壮さを感じさせる体配に、杢目肌が良く練れて肌立ち、匂口明るく冴えた互ノ目丁子を巧みに焼いた作品で、新々刀期の備前物を彷彿とさせる出来口。
附属の拵は陸軍将校用新軍刀。通称三式軍刀。またの名を決戦刀と呼ばれるタイプで、それまでの戦訓から、九四・九八式軍刀は「柄」と柄に纏(まつ)わる目釘と柄糸の脆弱性が問題視され、それらの問題を改善し、且つ、時局柄、機能・実用に重点を置いた外装として誕生しました。
責金や猿手は省略され、鐔と金具も簡素化。鯉口には防塵2分割口金を採用。また、納める刀身の中心の長さを増し、二本目釘にして頑強さを求めました。中には通常、竹を用いて作られる目釘を、螺旋式の鉄目釘にしているものも見られます。
柄巻きは一貫巻を採用し、柄糸には漆を掛けて補強が図られた他、目貫が旧来の太刀拵から打刀拵の位置に変更される等の特徴を持つ、まさに実戦用軍刀拵です。本刀附属のこの三式軍刀はその中でも初期型で保存状態極めて良く、軍装趣味人にとっては垂涎の品と言って過言ではないでしょう。
現状でも地刃の観賞は可能ですが、出来が良い一刀だけに、是非とも美術観賞用の真面目な研磨を施して頂き、市原長光の技量の高さをご堪能下さい。
裸身重量794グラム。 拵に納めて鞘を払った重量1,157グラム。